第31回(12月10日)クラスの復習

■クアトロにおける弦の張り替えと調弦のコツ

①クアトロ用の弦とは?
・クアトロ弦は、ギター弦でも有名なメーカーであるダダリオ社D’addario (アメリカ製)がもっとも普通に使われていると思います。国内では入手できないので、私は自分でまとまった数量を輸入しています。ブラックナイロンです。700円/セットで、頒布しております。
http://www.daddario.com/DADProductDetail.Page?ActiveID=3769&productid=305
・クアトロ弦のセットは、第一弦と第四弦が同じ太さのセットと第一弦と第三弦が同じ太さのセットがあります。
このダダリオの場合は前者です。ほかにも知られているピラミッド社Pyramidのセットは後者です。私の場合は、ダダリオを使い、この第四弦を、ラ・ベラ社La Bellaのギター弦(ブラックナイロン)の第三弦に代えています。テンションが高くなり、音量もあがり、音質も強くなります。(ただ調弦は難しくなります。)ちなみに、ギターの第一弦と第二弦は、それぞれ、クアトロの第三弦、第一・四弦に利用することができます。クアトロ弦の太さを正確に測定し、代用に耐える釣り糸を張る人もときどきいますが、私はあまりお勧めできません。

②クアトロの弦の替え方
・クアトロにしても、バンドーラにしても、弦の替え方はクラシックギターと何らかわりません。ただ、駒(ブリッジ)のところは、だいたい同じ処理ながらも、ネックの方での巻き込み方は人によっていろいろです。以下のサイトの写真は、参考になると思います。
http://www.fana.co.jp/change.html
・駒とペグの穴に弦を通し引っ掛けた後は、弦をあまりたるませない状態から巻き始める方が、後にチューニングが楽です。弦が伸びて安定しなければならないのですが、その弦長部分がより短くなるためです。あまりたくさん巻き込むのも見栄えがよくありませんし。
・しばしば張り替える人は、弦巻用ワインダーを買っておくと便利です。クアトロは、ギター用で大丈夫です。エレキベースにも使えるし、マンドリンには少し大きいがたいてい問題ないです。
・弦が張れたら、チューナーで、開放弦をまずざっとチューナーで合わせてください。そのとき、ギターチューナーで、音名が表示されますが、他の弦の共鳴する倍音や別の音のアルファベットが表示されることがありますが、間違えなく正しい音に近づきましょう。合わせている弦以外の弦が振動しないようにほかの弦はミュート(消音)しながらやるとよいでしょう。
・次に、早く音程が安定しやすくなるように、弦をよく伸ばすことが大事です。開放弦をだいたい合わせたら、楽器から引き離す方向に、それぞれの弦をぐいぐい、相当強く引っ張って下さい。それでずいぶん下がるので、またざっと調弦して、また同じことを繰り返してください。これを二、三回やってから、寝る前に正しく調弦した上で、ペグをひと回りからふた回り、巻き上げておいてください。それでも、翌朝はまた下がってしまっているでしょう。その日の夜も、また少し巻き上げておくと、翌日からはずいぶん調弦が安定するようになります。
・クアトロ弦はずいぶん長いので、余りはネックの裏でくるくると巻いておくといいでしょう。切ってもいいです。

③弦を代えるタイミングは?
・ハイポジションを用いたソロを毎日のように弾く私としては、1週間ぐらいで交換したいところです。ピッチ(音程)が狂ってくるからです。第三フレットぐらいまでのローポジションしか使わない伴奏用の使用なら、極端に言って、切れるまで替える必要はないとさえいえます。実際、切れるほどのパワーで弾ける人もそういないので、今まで弦を交換したことがない人もきっと多いことでしょう。
・ギターの低音弦のように錆びたりすることがないクアトロ弦の寿命とは、やはり、かき鳴らしの連続により、弦がこすれて、ピッチが合わなくなるときということになります。

④クアトロという楽器は、通常フレット音痴!
・クアトロにおいてピッチが合わないことは、いろんな要因があるため日常茶飯事です。
・まず、一般的に言って、標準的なレベルのギターほどにチューニングが合うクアトロは、5%ぐらいだと思います。それは、もちろんコンサートタイプと呼ばれるものです。たいてい17フレット仕様です。普通は伴奏用、学習用は14フレットが多いです。
・その原因の第一は、フレット音痴です。フレットがきちんとした間隔で打ち込まれていないため、音程が正確ではありません。開放弦をきちんと合わせても、つじつまの合わないフレットが出てきます。
・次に、弦が古く、傷などがあったりして、ピッチがあいません。古くなくても、不良品として合わない弦もあります。ギター弦の世界でもけっこう問題になっているので、品数の少ないクアトロ弦では、相当起こりやすい事柄でしょう。
・次に、弦高の問題があります。弦と指板との間隔を弦高と呼びます。これが高いと、低い場合に比べて、弦を指板に押し込んだとき、より高いテンションがかかります。それにより、音が高くなってしまうのです。弦高の高いクアトロは押さえるのが大変ですが、右手は弦の真横からしっかり押しながら弾けるので、しっかりした音になります。
・弦高を決めるのは二つの要素があります。ナット(0フレットの細い棒、プラスチック・木・牛骨)が高い場合と、胴のサウンドホール近くのブリッジ上にあるサドル(プラスチックや牛骨)が高い場合です。
・ナットが高いのはよくありません。開放弦できちんと合わせても、近くのローポジション(たとえば1~3フレット)を押さえると、ずいぶん深く押さえ込まなければならず、とくに第一・四弦などの太い弦は、ピッチがかなり上がってしまいます。どれほど上がるのか、自分のクアトロで開放弦をきちんと合わせてから、たとえば第四弦3フレットのレ(D)を押さえて、どれほどチューナーのメーターが上がってしまうか見てみるといいでしょう。
・解決法は、ナットを削って低くしてもらうか、弦が通る溝を深くして下げてもらうことです。
・一方、サドルが高い場合は、ハイポジションに狂いが生じやすいです。これは、実際ある程度仕方がないことです。弦の弾きやすさ(当たりの厚さ)と狂いとの最大公約数を取って、高さを決めるほかありません。
・ただ、クアトロは、バイオリンやフルートのように単音を長く伸ばす楽器ではありません。ハイポジションでソロを展開する場合でも、チャスキードなども含みながら、パーカッシブな、スタッカートぎみな、短く減衰の速い音を多用する楽器なので、意外と多少の音の狂いは気にならなかったりします。でも音大生はどう言うかな?(笑)

⑥実際にクアトロを調弦してみよう!
・まずは、ギターチューナーで、開放弦を合わせましょう。キャリブレーションが変更できるチューナーなら、A=440Hzに設定しましょう。第四弦から順に、ラ(A)、レ(D)、ファ#(F#)、シ(B)です。ベネズエラ人で耳のいい人は、これをCambur Pinton(CAM-BUR-PIN-TON)という4つの音程でまるごと覚えていて、それだけで合わせてしまいます。もちろん、別の楽器で同じ音を出して合わせても結構です。
・チューナーの場合、他の弦が共鳴振動して、別の音名が現れたら、他の弦をミュートして下さい。
・糸巻き(ペグ)には「あそび」があるので、上げながらチューニングすることが大切です。音を少し下げたい場合、それよりも少し余計に下げて、上げながら目標の音に近づけます。
・ここまでは、チューナーさえあれば、だれにでもできることです。

⑦できるだけ気持ちのいい響きを求めて!
・クアトロは、以上に書いたような事情で、開放弦を正確に合わせただけでは、フレット間のつじつまがあいません。たとえば、第三弦の開放弦のレと、第一弦3フレットを押さえたレはたいていのクアトロでは合いません。
・クアトロはいろんなキーで弾かれながらも、とくに学習段階では、D(そのマイナーキーのBm)とG(マイナーキーのEm)のキーで弾くことが多いです。今回はDのキーをできるだけ気持ちよく響かせられるための微調整を学びましょう。
・Dのキーでは、上述のとおり、ふたつのレが合いませんから、上がってしまった第一弦のレを下げます。それを押さえながら、チューナーでDに合わせます。これでDコードを弾けば完璧です。A7も第一弦2フレットの音が程よく下がっていていい感じのはずです。しかし、キーDのもうひとつのスリーコードであるGはどうでしょう?かなり、気持ち悪い音になっていませんか。第四弦の2フレットのシは、押さえた音なので本来のシより少し上がっているはずです。そして、第一弦の開放弦のシは、3フレットのレを調整したため、本来の音より低くなっています。このふたつのシがぶつかって、いやな響きになっています。そこで、最大公約数を取るようなことが必要となります。これをうまくやれるかが、ミソなのです。でも、そんなに難しいわけではありません。
・ギター系の傾向としては、太い弦ほど、フレット音痴になりやすいです。つまり、押さえたときに上がりやすい。ですから、クアトロの第一弦と第四弦が太めで狂いが大きいのです。なので、この二つの弦を微妙に下げることが必要です。微妙とは?まず、それぞれチューナーの目盛を見て5~10セントcentsほど下げてみてはどうでしょうか?それで、スリーコードD→G→A7を弾いてみて、全部にわたって許せる響きなら、それでよいのです。どこか気持ち悪ければ、許容範囲になるまで、少しずつ調整してください。
・気持ちいいかどうかは、慣れです。いつも気持ちいいか、悪いか、気にする習慣を持つこと、というか、自然に気になってしまうことが大事です。
・勘所が決まったら、自分のクアトロは開放弦調整の段階でどの弦をどれほど下げておけば、ちょうどよいのかセント数(目盛の位置)を覚えておけばよいのです。
・ほかのキーのときも、こういった微調整が必要です。キーがGなら、キーがDのときのGコードよりも、Gコードが大事なります。第一弦と第四弦のシをできるだけきちっと一致させることを優先させなければなりません。
・何よりも、最初は時間がかかっても、よい響きを求めて、自分の「クアトロのクセ」を発見してくださいね。

 

■右手のアップダウンの表記について

・これまで、視覚的な方向と一致させるために、逆に示したこともあったかもしれませんが、今後は統一します。
・ダウンストロークは上向きの矢印、つまり「↑」、アップストロークは下向きの矢印、つまり「↓」となります。
・これは、五線譜が念頭にあります。ダウンの場合、低音弦(第四弦)から順に高い音を弾いていくので、つまり、五線譜の下の方の音から上の方の音へ弾いていくので、上向きの矢印になるわけです。アップも同じ理由で、上向きの矢印となります。
・頭で、音の上がり下がりと、五線譜ないし指板を一致させられるような感覚的イメージを作って下さいね。

 

■拍の裏表と体の揺れ

・以前にも話しましたが、たいていのラテン音楽、ないし、ベネズエラ音楽は、騎馬民族の音楽といえると思います。馬上にてリズムが生まれたことと思います。馬の背中に着地する表拍と、宙に放り上げられるような裏拍の連続です。
・フラメンコのジプシー(ロマ)たちは、表拍をa la tierra(地面に向かって)、裏拍をal aire(宙に向かって)と表現したりします。
・クアトロのアップ・ダウンの手の動きもこれとは無関係ではないはずです。
・「ノリノリ」になれるように、ダウンのときは体全体を下方に、アップのときは椅子から離れるぐらい浮かせて、みてはどうでしょう。まず、極端に体にやらせてみることです。
・まず、最低、これにより、譜面に↑↓が書いてなくても、必然性として、どちら向きに手を動かすかが分かってくるはずです。そして、腕としては、上下に交互に動いているだけで、ときおり「空振り」が入っていることに気がつきます。
・実際の速い演奏の中で、体を上下に揺する余裕はないですが、うまいノリノリの人の演奏を見ると、実際それほど体が動いていなくても、体の中でその馬上の感覚がうごめいているように思います。
・こういう考え方を聞いたことは自分自身も一度もないのですが、そういう種類の感覚がうごめく境地がきっとあるはずだと想像しながら、自分なりに試行錯誤しながら、目指しています。そして、その感覚を持って、音楽を聞き、演奏するとき、すべてが本質的な方向に行き、なんと言うことなくその曲を体験できるのだと思います。まずは、「そんなのがあるはずだ」という想像からです!

 

■新曲 『La Cabra Mocha』

・曲全体のデモンストレーション
・教材Patrones_Gaitaにおいて、ガイタのチャスキードの多いパターン[A]を説明しながらも、まずチャスキードが2回出てくる[B]の練習に取り掛かる。
・ガイタのリズムについては、太鼓なども交えて、次回再度説明します。

 

■知識コーナー:バイレ・フラメンコの実演

・スペインとベネズエラは、もちろん音楽的につながっていることは言うまでもありません。
・大航海時代に新大陸に向かう者たちは、出航の準備が整うまで、しばらくの間スペイン南部アンダルシア地方の港にとどまったそうです。そのことはアンダルシア的なものを新大陸にもたらす要因になったことでしょう。南米のスペイン語にアンダルシア訛りの傾向があるのもその一例だそうです。(例:seseo)
・ベネズエラのホローポは、起源が学者により、議論・推論されているものですが、スペイン南部のファンダンゴfandangoがもとになっていると言われています。たしかに、今はフラメンコの重要な曲種のひとつとなっている、Fandango de Huelvaのコードやリズムの流れは、ホローポの王様にして最も古いタイプとされているパハリージョ Pajarilloと似ています。
・と、そんな前置きをしながら、強引に(?)フラメンコ舞踊の披露に移りました。踊った曲種名は、ティエントス Tientosと、セビリア Sevillaのフォークダンス的なフラメンコ Sevillanasです。普段は、二人だけでフラメンコ舞踊をやることはまったくないので、なかなか大変な事態でしたが、長い演目をみなさんが興味深く見守ってくださいました。
・その後は、フラメンコ談義になってしまい、ベネズエラ音楽の練習に戻る雰囲気になれぬまま、クラス終了となりました。予告の学習事項は、ほとんど進まずという状況でした。(笑)