第51回(6月8日)クラスの復習

■新曲 『バホ・セコ』 Bajo Seco

・ホローポ・セントラルは、スタッカートが多く跳ねた調子の、明るい曲調ではユーモラスな趣きさえある田園風の「ダサかっこいい」ホローポです。アフロ系のホローポでもあります。『バホ・セコ』は、バンドーラ・セントラル(金属弦8弦)の人間国宝、フアン・エステバン・ガルシーア Juan Esteban Garciaの作で、マイナーで始まり、ホローポ・セントラルらしい豊かな構成を経て、ノリノリのメジャーで終わります。

・バンドーラでメロディーを弾くのも、クアトロでコード伴奏するのもとりあえずできますが、スタッカートを多用した「味」を出すのが難しいかもしれません。普通は、クアトロクラスで取上げるような題材ではないと思います(笑)。本場の人が知ったら、さぞ驚嘆することでしょう!しかし、当クアトロクラスでは、最初にJoropo OrientalのEl Pastorcito、そして数々のJoropo Llanero、さらにJoropo GuayanésのEl Prisioneroと本当にいろいろなホローポをやってきました。そろそろ、Joropo Centralも挑戦というところだったと思います。

そのフアン・エステバンが演奏するシーンです。(You Tubeより)


YouTube: Colinas de Sabaneta. Juan Esteban García, 1995

Bajo Secoが演奏され、それに合わせ人々が踊っている映像です。


YouTube: Delegacion cultural de Guaribe en la UPEL Maracay

・音楽採譜専用ソフトTranscribe!で、区間リピートを用いて速度60%で再生し、曲の始めから、セクションに分けて繰り返し練習しました。

※英語版となりますがTranscribe!は非常に便利です。1ヶ月は無料使用。
http://www.seventhstring.com/xscribe/download.html

・各セクションには、お決まりのコードパターンが満載です。今回は、最初からコードを暗記しながら弾くという練習姿勢を強調しました。そこで、今回終えたセクションDまでのコード循環を説明します。

セクションA:フラメンコの下降進行

これは、フラメンコでは最も不可欠な、典型的な下降進行です。ただ、必ずしもAmから始めるとは限りません。このセクションでは、バンドーラが出だしで弾く最初の小節がAmで、クアトロが入るとG⇒Fを2回繰り替えしてから、Eに落ち着きます。そして、そのEはE7となっており、E7⇒Amというお決まりのパターンで頭に戻ることができます。

セクションB:2組のペア

G7⇒Cが2回、E7⇒Amが3回と覚えます。このとき、ペアごとで覚えるのであって、G7とCを分けて覚えるのではありません。G7が出てきたら通常自動的にCが続くからです。E7についても同じ。

セクションC:フォーコードの循環

スリーコードの循環は、I(m)⇒IV(m)⇒V7が一般的です。V7が伸びれば、I(m) ⇒IV(m)⇒V7⇒V7というなじみのパターンです。つまり、D⇒G⇒A7⇒A7などです。I(m)が伸びると、I(m)⇒I7⇒IV(m)⇒V7となります。D⇒D7⇒G⇒A7は、通常D7を頭にしますがSeis Numeraoでおなじみですね。このDをAmに置き換えたものが、このセクションの循環です。配布済みのフォーコード表と同じ並びです。もちろん、A7⇒DmとE7⇒Amの2ペアが含まれていることにも気づいてください。

セクションD:グアチャラカ

Joropo LlaneroやJoropo Guayanésに、グアチャラカ guacharaca というゴルペ(循環コードのホローポ)があります。頭に戻るときに、G7⇒Cのぺアを用いる方がスムーズなので、8小節目のGをG7に変えます。これもまた別な順序の典型的なフォーコード循環で、キルパなどにも現れます。2小節単位でなく1小節で進行していくこともあります(セクションF)。最初の1段は、別としますが、その後、この循環の7小節目のGを頭として、2循環して、Gに戻ったところで次のセクションに続きます。

・ついでに最後まで説明してしまいます。

セクションE:1組のペア

7が現れたら自動的にGですね。その後、セクションFへの移行箇所は、この音源はほかの音源と比較すると少し怪しい部分がありますが(最後のG⇒D7が余分?)、今回はこのとおり演奏することにしましょう。

セクションF:グアチャラカの短いやつ

グアチャラカを1小節パターンにして、その最後から始めたような進行です。まだ扱っていませんが、Joropo Orientalでは、エストリビージョ Estribillo と呼ばれる即興部分にこの進行が使われます(その際最初のGはG7になることが多いです)。

セクション G:いつものやつ!

最後の上げ潮のところで、「いつものやつ」です。とくにカリブ周辺では、普遍的なパターンです。メキシコのラ・バンバ、キューバのグアンタナメラもこの繰り返しです。マイナーバージョンもよく登場します。この進行は、ホローポ的には、ジャノでSies Corrido、東部でGolpe de Arpaと呼びます。

・それにしても、これまでのホローポと違って、なぜこんなにいろいろなコード循環が詰まっているのでしょう?ホローポ・セントラルは、アフロ系住民のホローポです。その昔、ベネズエラのアフリカ奴隷たちは、領主たちの聞いているヨーロッパ伝来の組曲形式の音楽を模倣して演奏し、喜ばせようとしました。その後は、自分たちの楽しみのために演奏するようになるのですが、その流れで、ホローポ・セントラルは、いろいろな断片が組み合わさった、ほかのホローポにない複雑な構造を持ったと考えられています。ホローポ・セントラルで使われるアルパが鉄弦を用いるのも、ハープシコードの音に近づこうとしたからだとされています。
Fernando Guerrero, “El Arpa en Venezuala” p.181

・次に、クアトロ伴奏をする際のノリについてです。ホローポ・セントラルのクアトロ(実は、ホローポ・セントラルでクアトロが使われるのはバンドーラを伴奏する場合のみで、アルパの場合は使いません)の特徴としては、スタッカート、跳ねた調子、シンコペーションで結ばれた2小節がセット、という点が挙げられます。
・跳ねた調子とスタッカートを出すには、前回触れた「ブンチャッブチャ」のノリが有効です。この「ブンチャッブチャ」感をより出すために、1拍目の裏を弾かないのも手です。

・シンコペーションで結ばれた2小節がセットになったメロディーに同調するときは、まず以下のAの弾き方ができるようにしましょう。次にBのようにチャスキードでしっかり消音して、2小節目の頭に緊張感のある沈黙を作ります。そのとき、アップのチャスキードの消音に気をとられて腕の動きが止まってしまい、次の1拍目の裏がスムーズに弾けなくなってはいけません。それができたら、Cのように2拍目にレピーケを入れてみましょう。このレピーケとアップのチャスキードがしっかり決まると、伴奏にえもいわれぬスパイスが加わります。後半が、4分音符になるパターンばかり使うとくどいので、ときにはDのように頭が休符ながら、普通に続くパターンも用いるとよいでしょう。

・「ブンチャッブチャ」と上の、とくにB,C,Dと、普通に弾く「ククチククチ」のパターンを混ぜて変化をつけると非常に、面白い伴奏になります。コードがテンションもなく素直なものを用いるので、リズムで遊びましょう。どこで、どのパターンを使うべきかという課題は、とりあえず全体を弾き終えてから取り組みたいと思います。

・セクションBからセクションCへの入り方は注意が必要です。セクションB の4回目(2コーラス目の2回目)のメロディーの最後の音がAmに落ち着いたとたん、そのAmは、セクションCの頭のAmとなっています。これは、El Pastorcitoでも経験した切り替わりです。メロディーの決まった前半部分から、即興演奏の後半部分に切り替わるときによくある現象です。

・セクションCから突然、キーの違うセクションDに入りますが、それには合図(ジャマーダllamada)があります。セクションCは7回のコード循環となっていますが、6回目の前半部分(Am⇒A7に相当)でラドミソを3回繰り返すよく目立つメロディーが弾かれます。それに気が付き、7回目も同じメロディーが繰り返されるのを確認して、セクションDのGコードに飛び込んで下さい。ですから、循環を7回を数えるのではなく、そのジャマーダとなるメロディーが来るのをよく聴いて待って下さい。譜面的には、配布のメロディー譜で確認して下さい。

・セクションDにおいて、一箇所弾き方を指定したのでその部分を書いておきます。4段目のG⇒G7(灰色塗りつぶし)です。
 i:人差し指、m:中指、a:薬指、ch:小指

全部ダウンです。分厚い音を出すために、amiを同時にぶつけて弾く箇所が4つあります。前半の2拍目の裏からはじまる「ジャラッ!」は、chなしでaとmだけでも結構です。いずれにしても、指が弦上を通り過ぎるのが速すぎないように、弦上に保って指の間隔を開いてこすりつけながら下に運ぶことが大事です。その上で、外向きに指をはじく動きも加えます。そうやって「ジャラッ!」とやり、iが弾き切ったと同時に、手のひらでスタッカートになるようにしっかり消音します。G7の箇所は、4弦とも押弦するコードなので、指を弦につけたままただ浮かせるだけで、しっかりとスタッカートができます。

 

■知識コーナー:コロンビアのホローポ・フェスティバル
 ~マルチプレーヤーのミスコン~

・ベネズエラのことを、「知られざる音楽大国」と言ったりしますが、ラテン諸国を席捲したクンビアなどを有するコロンビアこそ、音楽大国と言えるでしょう。カリブ海に面した北部ではクンビアやバジェナート、アンデス地帯ではバンブーコなどのコロンビア風アンデス音楽、太平洋側の海岸にはアフロ系マリンバ音楽やサルサがあり、さらに、その三分の一がコロンビア領内にあるロス・ジャノス(平原地帯)では、ベネズエラと共通のムシカ・ジャネーラがあります。コロンビアでもホローポ・ジャネーロが大変盛んですが、それはこういったいろいろなジャンルのうちのひとつにすぎません。一方、ベネズエラ=ホローポと連想されるほどのホローポ大国ベネズエラでは、ホローポが地域ごとに特色を持ち何種類もあります。

・ホローポ・ジャネーロに関しては、ベネズエラもコロンビアも同じなのですが、どちらかというと、ベネズエラの方が自然、コロンビアの方が丁寧という印象があります。また、前者は個人的、後者は集団的な感じがします。踊りの衣装やリキリキ(ジャノスの男子正装)をきちっと揃えるのは、どちらかというコロンビアの方に見えます。歌に関しても、ベネズエラでは歌詞の即興性、コロンビアでは、歌いまわしをきれいに歌えることが大事とされる傾向あると聞いたこともあります。両国の国民性が出ているように思います。

・こういった違いから容易に想像されるのですが、コロンビアでは、非常に多くのムシカ・ジャネーラを含めたジャノ文化のフェスティバルが開催されています。ベネズエラでもポルトゥゲーサ州で、エル・シルボン El Silbón という大変重要なフェスティバルがありますが、大半のホローポ関連のフェスティバルは、コロンビア側のメタ県 Meta、カサナーレ県 Casanare、アラウカ県 Araucaで行われています。

以下のページでは、ジャノ関係のイベントが列挙されています。ベネズエラは何と一件だけ!

http://www.musica-llanera.com/festivales-concursos.php

・その中で、最も大きいものは、メタ県のVillavicencioで開催されるTorneo Internacional del Joropo (ホローポの国際トーナメント)です。以下は英語の記事ですが、ホローポのパレードやコンクールはちろん、コレオ(牛の尾を引っ張る競技)、ロデオ、バーベキュー、ミスコンテストなど賑やかなフェスティバルの概要がわかりやすく書かれています。

http://www.nileguide.com/destination/blog/bogota/2011/06/13/the-joropo-festival-villavicencio-meta-colombia-29-june-to-3-july/

・今回のクラスでは、コロンビアのReinado Internacional del Retornoからの驚きのYou Tube映像を紹介しました。ホローポの全部の種目(歌、楽器全種、踊り)をこなした上でのミス・コンテストです!紹介映像の出場者は、その年の優勝者です。どの種目も余裕たっぷりで楽しんでこなしており、関連動画に見えるほかの出場者と比べてもダントツの感があります。優勝を機に、ずいぶん注目されているようです。


YouTube: metaselva Astrid Arenas V. Srta Arauca

・みなさんも、クアトロ+アルファで何か新しい楽器をはじめてみませんか~?(笑)

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